英語が得意だから、副業で翻訳の仕事をやりたいと思っている人は多いと思いますが、翻訳者になるのもなかなか難しいですよね。そんな時は、翻訳チェッカーという仕事にチャレンジしてみませんか?
翻訳チェッカーの仕事では、チェック内容は大きく分けて次の3つがあります。
表記や文法(英文法、日本語表記のルール)
専門知識
翻訳チェッカーとして募集される場合、専門知識をどこまで求められるかはクライアント次第です。「そこは自分たちがやるから」という会社もあるので、自分のスキルに合った仕事を探してみましょう。
私が以前勤務していた会社では、専任の翻訳者を雇用していました。しかし、翻訳会社にも依頼したり、納品された成果物を社員がチェックすることもありました。
この記事では、副業として翻訳チェッカーに興味がある人に、そんな経験も踏まえて、その仕事内容とメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
本業は、米国医療機器メーカーで働く医療翻訳者。副業は18年目になりました。英語で副業したい人にわかりやすく解説します。
翻訳チェッカーとは
まずは、翻訳の流れから説明しましょう。
クライアントとは依頼主のことですが、多くは会社からの依頼になります。自社で翻訳者を専任で雇っている会社もありますが、大量案件や急ぎの場合には、外部の翻訳会社に依頼します。
翻訳会社の翻訳コーディネーターは、クライアントと翻訳者、翻訳チェッカーとの間を調整する人です。クライアントから依頼を受けたら、適任の翻訳者に仕事を依頼します。翻訳者は、納期厳守で納品します。
翻訳チェッカーは、翻訳者からの成果物をチェックします。場合によっては一次チェック、二次チェックと何度かやりとりする必要があり、最終成果物が完成するまで続きます。
それでは次に、翻訳チェッカーが行うチェック内容について解説していくことにしましょう。
翻訳精度のチェック
翻訳者に求められるのは、原文を忠実に翻訳する技能です。著者が伝えたい内容を、正しく過不足なく翻訳することが仕事となります。
一方、翻訳チェッカーがやることは、翻訳の精度をチェックし、成果物の完成度を上げることです。「正しく」というのは誤訳がないこと、「過不足なく」というのは余計な言葉を付け足したり訳抜けしたりしていないことを意味します。
つまり、翻訳者と同レベルに原文を読み込むことができ、著者の伝えたいことを正しく理解できるだけの語学力が必要です。
クライアントが翻訳を依頼する時、多くの会社は独自の用語集やスタイルガイド(表記ルール)などの資料を提供してくれます。そして、翻訳者や翻訳チェッカーはその資料を元に作業することになります。
一文一文、一語ずつチェックしていく丁寧さと集中力が求められます。
表記や文法のチェック
具体的な作業では、下記の4点についてチェックします。
国文法
スタイルガイド(表記ルール)
独特な言い回しや表現
英文法
英文を正しく理解するには、英検準1級あるいは1級レベルは必要です。求人の需要も高くなります。
たとえば医学論文の場合、1文がすごく長いのです。なかなかピリオドが現れず、1文が3行4行あるのが当たり前なんていうものも多くあります。
長文の中に構文や関係詞、倒置などが入り組んでいる文章を理解するには、しっかりとした英文法の知識が必要です。作業時間にも影響が出るし、いちいち調べるのもストレスになります。
とはいえ、翻訳会社のトライアルに合格すれば仕事はできるので、臆せずチャレンジしてみてください。
国文法
和訳をネイティブチェックする場合は、国文法も同じくらい重要です。
翻訳文をチェックして、ここが違うと指摘するには、根拠を示す必要があります。ニュアンスが違うだけという場合もありますが、それを言葉で説明することが求められるのです。
たとえば、「Aに向かう」と「Aへ向かう」の違いを説明する場合、どちらも格助詞で、「に」は到達点に「へ」は到達点プラス方向性に焦点が当たっていると、言葉で説明できないといけません。(「みんなの日本語事典」参考)
中学レベルの国文法を一度見直してみましょう。ニュアンスの違いを指摘できるのは日本語ネイティブならではですが、言葉で説明できてこそ翻訳チェッカーです。
一度チェックしてみましょう。
▶︎中学 まとめ上手 国文法: ポイントだけをサクッと復習(受験研究社)
スタイルガイド(表記ルール)
クライアントから提供されるスタイルガイド(表記ルール)は、和訳した時の表記を統一するためのものです。たとえば、代表的なものはこんな感じです。
日本翻訳連盟が無料でスタイルガイドを出しているので、興味がある方は見てみてください。
・JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)
私が翻訳するとき、クライアントから特に指示がない場合はこのスタイルガイドを参考にしています。
独特な言い回しや表現
翻訳する分野ごとに、独特な言い回しや表現があります。
どんなに語学スキルが優秀でも、クライアントは訳文を見ただけで誤訳がわかります。今は昔と違い英語ができないから依頼するのではなく、時間を節約するために依頼しています。しっかり調べてチェックしましょう。
翻訳チェッカーがどのレベルまで求められるかは、その人によって違いますが、IT専門、医療専門、特許専門など、自分の経歴を活かした分野の仕事をこなして、専門スキルを身に付けるのが王道です。
ITのチェックなら〇〇さんにお願いしよう、特許なら△△さんにというように、翻訳会社に認められることが翻訳者へのスキルアップにもつながります。
翻訳チェッカーのメリット
翻訳チェッカーをやることのメリットは次の通りです。どうせやるなら、メリットを得られるように意識してやってみましょう。
・プロ翻訳者の技法を学べる
・翻訳チェッカーとしてのキャリアを積む
・専門スキルを身につけることができる
・仕事のチャンスが広がる
・翻訳チェッカーとしての報酬が上がる
プロ翻訳者の技法を学べる
プロの翻訳者の原稿を見ることができるのは、何よりの勉強になります。
原文と訳文とを突き合わせてチェックをすることで、こういう訳し方があるんだなとか、こういう表現をすればいいんだななど、自分だけではなかなか気づけないことを知ることができます。
そうして得た知識で、自身の翻訳スキルを向上させていきましょう。
翻訳チェッカーとしてのキャリアを積む
翻訳チェッカーの仕事も長く続けることで、翻訳チェッカーとしてのキャリアを積み上げることができます。
高度な翻訳チェックのスキルを身につけることで、品質管理の点においてもスキルアップ!
翻訳コーディネーターなどの仕事もできる可能性が広がります。
専門スキルを身につけることができる
自分が希望する翻訳分野について専門知識が足りない場合や、現場のノウハウなどがわからない場合、プロの翻訳者の訳文からそれらの知識を得ることができます。
特にその業界で働いた経験がない場合には、こうした専門分野の知識を得られる機会は他にないので、翻訳チェックをしながら、どんどん吸収していきましょう!
仕事のチャンスが広がる
翻訳コーディネーター、翻訳者、翻訳チェッカーは一つのチームです。
翻訳者と翻訳チェッカーはお互いに補完しながら、翻訳コーディネーターはそれらをうまくまとめ、クライアントへ高品質な成果物を納品することを目指します。
いい仕事をしようという、チーム全員の意識が大切です。
翻訳チェッカーとしての報酬が上がる
分野や翻訳会社にもよりますが、一般的な文書の翻訳チェックより、ITや医療、特許、契約書など、専門性が高いほど報酬も高くなります。
フリーランス翻訳チェッカーなら、一般的には1文字あたり1円〜3円くらい。プロジェクト単位の場合、1案件につき1万〜5万円程度が相場です。
企業内の専任翻訳チェッカーなら、専門分野とスキルによっては月に50万円以上になることもあります!
翻訳チェッカーのデメリット
それでは、今度は翻訳チェッカーのデメリットを見てみましょう。
・単調な作業のため、疲れやすい
・いつも納期に追われてストレスを感じる
・最終チェックの責任が重い
・モチベーションを維持しづらい
・AI翻訳や機械翻訳などへの対応が難しい
単調な作業のため、疲れやすい
翻訳チェックは、なかなか地味な作業です。
納期が迫っている時などは、ずっと座りっぱなしでひたすらチェックし続けるわけですから、かなり疲れます。
この単調な作業からくるストレスや集中力の欠如を、いかに克服するかが課題になります。
いつも納期に追われてストレスを感じる
翻訳者のあとに作業するのが翻訳チェッカーなので、どうしても納期に追われることになります。
そのプレッシャーを感じながら作業するので、ストレスは半端ありません。
とくに大きなプロジェクトともなると量も多くなりますから、時間的な制限も加わりかなりきつくなります。
最終チェックの責任が重い
翻訳チェッカーは、最終的な成果物の完成を判断することになります。
そのため、最終チェックでOKを出す責任が重くのしかかります。
最終的な品質保証にも責任があるのが、翻訳チェッカーの仕事です。
モチベーションを維持しづらい
チェック作業は目に見えない部分が多いため、翻訳チェッカー自身が直接的に評価されにくくなります。
翻訳者のように文章を作り出すわけではないため、評価基準があいまいで、貢献度が分かりづらいのです。
そのため、モチベーションを維持するのがとても難しくなります。
AI翻訳や機械翻訳などへの対応が難しい
翻訳支援ツールや機械翻訳、AI翻訳など、最近の自動翻訳はかなり精度が高くなりました。
もっともらしい文章の中から間違いを見つけるには、翻訳チェッカー自身が常に新しい技術やツールを学び続ける必要があるため、こうした作業が負担になります。
翻訳チェッカーにチャレンジ!
翻訳チェッカーも、翻訳者と同じくらい知識も技術も必要な仕事です。
翻訳チェッカーにも、ぜひチャレンジしてみましょう!
専門知識が拡充する
多角的なキャリアパスにつながる
翻訳チェッカーの需要は多い
こうした理由から、翻訳者だけでなく翻訳チェッカーという仕事も視野に入れることをおすすめします。
翻訳チェッカーとして客観的に見ることは、翻訳者になってからも必ず役立ちます。