ポストエディターという職業を聞いたことはありますか。
機械翻訳でできた訳文を、こなれた言葉に編集する人をポストエディターといいます。この仕事も翻訳プロセスに欠かせない大切な仕事の一つです。
とてもよく似ている仕事にリライトがあります。ポストエディットとリライトの仕事は、どちらもすでにあるテキストを修正するという点で共通していますが、その目的やプロセス、求められるスキルには大きな違いがあります。
この記事では、ポストエディットとリライトについて、その作業プロセスや使用されるツール、必要なスキルについて詳しく解説します。
ポストエディットとリライトの違いについて、次の3点を見ていくことにしましょう。
作業プロセス
スキルとツール
昨今の翻訳に欠かせない「ポストエディター」という仕事について興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
本業は、米国医療機器メーカーで働く医療翻訳者。副業は18年目になりました。英語で副業したい人にわかりやすく解説します。
ポストエディットとは何か?
ポストエディット(PE)とは、機械翻訳(MT)が作り出した訳文を、人間が修正することです。この仕事をする人をポストエディターといいます。求人ではMTPEとなっているので、求人情報があったら見てみてください。
AI翻訳も機械翻訳の一部ですが、技術が進歩し利用率が高まっているため、ポストエディターの需要が増えています。
機械翻訳は速く大量のテキストを翻訳できますが、その品質は原文の構造に依存しているため、誤訳や不自然な表現が含まれていることが多く、人間の手による修正が必要なのです。
そのため、ポストエディターには高度な言語スキルと翻訳能力が必要とされ、特に専門分野の翻訳では、専門用語や業界特有の表現に精通していることが求められます。
ライトポストエディットとフルポストエディット
ポストエディットには、「ライトポストエディット」と「フルポストエディット」の2種類があります。
ライトポストエディットでは、訳文の意味が通じることにポイントをおき、文法や基本的な誤訳を修正するだけで、細かい表現や文体にはあまり手を加えません。
一方、フルポストエディットは、機械翻訳の訳文を人間が翻訳した訳文と同程度の品質に仕上げることを目指します。文法や文体、用語の統一など、細かい修正を行います。
ポストエディットのメリット
ポストエディットのメリットは、人間による翻訳に比べて時間とコストを大幅に削減できるという点です。ただし、それが本当に活かされるのは、機械翻訳の品質が高い場合に限られます。
ポストエディターは、機械翻訳の訳文を正しく修正するスキルと経験が必要です。今後ますます重要な役割を果たす翻訳作業の一つとして注目されています。
リライトとは何か?
リライト(Rewriting)とは、元々ある文章やテキストをもとに、新しい表現や構成で書き直す作業のことをいいます。単なる修正や校正とは違い、原文の内容や意図はそのままに、表現方法やスタイルだけを大幅に変更します。
リライトの主な目的は、文章を読みやすくすることです。たとえば、専門的な内容を一般読者向けにわかりやすく書き直したり、同じ内容を別の文体で伝えたりする場合にリライトが行われます。
原文をしっかり読み、その内容と意図を把握したら、次は原文の重要なポイントやメッセージを抽出し、それを新しい表現や構成で再構築します。
この時、オリジナルの意味やニュアンスを損なわないように注意することが必要です。リライト後には、文章全体の流れや一貫性を確認し、必要に応じて修正を加えます。
リライトのメリット
リライトのメリットは、同じ情報を異なる視点や文体で提供できる点です。これにより、さまざまな読者層に対応することができ、情報の伝達効果が向上します。
また、リライトはコンテンツの再利用にも有効であり、すでにある資料を活用して新しいコンテンツを制作するのに役立ちます。
作業プロセスの違い
ポストエディットとリライトは、どちらも元々のテキストを修正する作業ですが、そのプロセスと目的には大きな違いがあります。
ポストエディットは、機械翻訳の訳文を修正する作業であり、主に誤訳や不自然な表現を直して翻訳文の品質を向上させることを目的としています。
一方、リライトは、元々の文章を新しい表現や構成で書き直す作業であり、読みやすさを向上させることを目的としています。
ポストエディットとリライトのプロセス
ポストエディット
ポストエディットのプロセスは、まず機械翻訳の訳文をチェックし、誤訳や不自然な表現を特定して修正します。元の意味を正確に把握し、適切な訳語を選びましょう。
ライトポストエディットでは、文法や基本的な誤訳の修正に留まりますが、フルポストエディットでは、文法、スタイル、用語の統一など、細かい修正を行います。
リライト
リライトのプロセスは、まず原文を正しく読み、その内容と意図を把握します。次に、原文の重要なポイントやメッセージを拾い出し、それを新しい表現や構成で再構築します。
オリジナルの意味やニュアンスを損なわないように注意することが大切で、文章全体の流れや一貫性を確認したら、必要に応じて修正を加えます。
つまり、ポストエディットは正確さと一貫性が重要で、リライトは創造性と表現力が重要ということになります。
スキルとツールの違い
ポストエディットとリライトには、それぞれ異なるスキルとツールが必要です。
ポストエディットのスキルとツール
ポストエデイットでは、原文の意味を正しく理解し、適切な訳語を選ぶスキルが必要です。また翻訳支援ツール(CATツール)や機械翻訳エンジンなどの専門ソフトを使って、翻訳の品質を向上させます。
訳文をデータベース化して、新たな訳文をチェックする際に利用する「Trados」や「MemoQ」などのCATツール、「DeepL」や「Google翻訳」などの機械翻訳エンジン(AI翻訳)などで、効率的に品質管理を行います。
リライトのスキルとツール
リライトには、優れた文章構成力や語彙力、文体の選択に関する深い理解が求められます。リライト作業では、一般的なワープロソフトやオンラインエディター、文章チェックツールなどを使用します。
リライトのツールには、「Grammarly」や「Hemingway Editor」などの文章チェックツール、「Google Docs」や「Microsoft Word」などのワープロソフトがあり、こうしたツールは、文章の修正や文体のチェックを支援し、作業を効率化します。
このように、ポストエディットとリライトには、それぞれ異なるスキルとツールが必要とされます。翻訳の品質を向上させるためには、ポストエディットの専門知識が求められますが、文章の可読性や効果を高めるためには、リライトの創造性とライティングスキルが重要です。
ポストエディターという仕事
ポストエディターは、機械翻訳技術の進歩に伴い、将来性がとても高い仕事です。
AIや機械翻訳の精度が向上する一方で、完璧な翻訳を完成させるにはまだまだ人間のサポートが必要です。特に専門分野やクリエイティブな文章では、正確さと自然な表現を両立するためにポストエディターの役割が重要なのです。
グローバル化による多言語対応の需要が増加しているため、ポストエディターの需要も今後ますます高まることが期待されています!