▼この記事で解決できる悩み
・TOEICや英検はどのくらいのスコアが必要?
・TOEICの勉強だけじゃダメ?
・翻訳チェッカーとしてやっていけるか不安…
「翻訳チェッカーになりたいけど、TOEICや英検はどれくらいのスコアが必要なんだろう?」 「TOEIC満点じゃなきゃダメ?」「英検1級は必須?」 そう思っている方は多いのではないでしょうか。
翻訳チェッカーの仕事は、原文と訳文を照らし合わせ、不自然な箇所を修正すること。そのため、高い英語力が必要とされることは間違いありません。しかし、その「英語力」が、TOEICや英検のような資格試験のスコアだけで測れるものではない、というのが翻訳業界の現実です。
この記事では、翻訳チェッカーとしても活動している筆者の視点から、翻訳チェッカーに本当に必要な英語力とは何かを徹底的に解説します。
単なるスコア論争ではなく、実際の仕事で求められるスキルに焦点を当て、TOEICや英検がどのように役立つのか、そしてそれ以外のどのような能力を身につけるべきかをお伝えします。この記事を読めば、あなたがこれからどんなスキルを磨くべきか、明確な道筋が見えてくるはずです。

本業は、米国医療機器メーカーで働く医療翻訳者。英語での副業は19年目になりました。英語で副業したい人にわかりやすく解説します。
翻訳チェッカーに求められる英語力の正体
翻訳チェッカーの仕事は、単に英語が「わかる」だけでは足りません。原文を深く、正確に「理解」し、その上で訳文を「磨き上げる」ための、多角的な英語力が求められるのです。
資格試験のスコアは、その能力の一部を示すものでしかありません。ここでは、翻訳チェッカーに本当に必要な英語力の要素を具体的に見ていきましょう。
文法力と語彙力:正確な理解の土台
翻訳チェッカーにとって、文法力と語彙力は最も基本的な土台です。TOEICや英検のスコアが高い人は、一般的にこれらの能力が高いと見なされます。しかし、単に文法ルールを知っているだけでなく、それが文章の中でどのように機能しているかを理解する力が重要です。
たとえば、時制の一致や関係詞の用法など、複雑な文法構造を正確に読み解く能力がなければ、翻訳者の誤訳を見抜くことはできません。また、語彙力についても、単に多くの単語を知っているだけでなく、それぞれの単語が持つニュアンスや文化的背景を理解していることが不可欠です。
単語のニュアンスを理解する力: 同じ意味でも、文脈によって使い分けられる単語(例:job
, work
, career
)のニュアンスを正確に把握する。
文脈から意味を推測する力: 知らない単語や表現が出てきても、前後の文脈から意味を推測できる能力。これは、多岐にわたる分野の文書を扱う上で非常に重要です。
読解力と論理的思考力:原文の意図を汲み取る力
翻訳チェッカーの仕事は、原文が何を伝えたいのか、その意図を正確に読み取るところから始まります。この能力は、単語や文法を知っているだけでは身につきません。文章全体を論理的に分析し、筆者の主張や論理展開を把握する読解力が必要です。
特に、専門性の高い技術文書や契約書などでは、一つの単語や句読点の位置が、文章全体の意味を大きく変えることがあります。このような微妙な違いを読み解く力は、TOEICや英検のような選択式の試験では測ることが難しい能力です。
ロジックの破綻を見抜く力: 翻訳者が原文の論理を誤解し、訳文で話の筋が通らなくなっているのを見抜く。
筆者の意図を汲み取る力: 表面的な意味だけでなく、文章の裏に隠された筆者の意図や感情を読み取る。特にマーケティングや広告の翻訳では不可欠です。
2. TOEIC・英検のスコアは翻訳チェッカーにどう役立つのか
TOEICや英検は、翻訳チェッカーのキャリアにおいて、全く無意味というわけではありません。これらは、あなたの英語力を客観的に証明する手段として、採用の際に大きな役割を果たします。しかし、それぞれの試験が測る能力には違いがあり、その特性を理解した上で活用することが重要です。
▶各資格や検定試験のレベル一覧表

TOEICのスコア:ビジネス英語力の証明
TOEICは、ビジネスや日常生活における英語でのコミュニケーション能力を測るテストです。特にリスニングとリーディングのセクションでは、実践的な語彙力や読解力が試されます。TOEICのスコアが高いということは、メールや会議資料など、ビジネス文書を素早く正確に読み解く能力があることの証明になります。
多くの翻訳会社が、応募条件としてTOEICのスコアを明記しているのはそのためです。
TOEICで測れる能力:
- ビジネスシーンで使われる語彙や表現の知識
- メールや報告書などの文書を素早く読み解くリーディング力
- プレゼンや会議の音声を理解するリスニング力
TOEICの有効活用法:
- 履歴書や職務経歴書に記載する: 応募書類にTOEICのハイスコアを記載することで、書類選考の通過率が上がります。
- 学習のモチベーション維持: 目標スコアを設定することで、語彙力や文法力の学習を継続するモチベーションになります。
▶TOEICスコア別の能力レベル


感覚として、最低でも英検準1級、TOEICはAクラス(860点以上)は必要かと思いますが、持っていない人もいるので、一概には言えません。
英検の級:より広範な英語力の証明
英検は、TOEICよりも適応範囲が広い英語力を測る試験です。特に、ライティングやスピーキングのセクションでは、自分の意見を論理的に構築し、表現する能力が問われます。
翻訳チェッカーの仕事は、修正提案やクライアントへの説明など、自分の考えを正確に伝えるコミュニケーション能力も必要とされるため、英検の学習は間接的にこの能力を鍛えることができます。
英検で測れる能力:
- 複雑な文章を理解し、自分の言葉で要約する力
- 論理的な文章を構築するライティング力
- 面接官と対話するスピーキング力
英検の有効活用法:
- 翻訳チェッカーとしての総合力をアピール: 英検の取得級は、単なる読解力だけでなく、幅広い英語スキルを持つことの証明になります。
- ライティングやスピーキングの練習のきっかけに: 英検の学習を通じて、日々の業務ではあまり使わないライティングやスピーキングのスキルを磨くことができます。
▶英検準1級スキルの目安

スコアだけじゃない!翻訳チェッカーに本当に必要な能力と対策
TOEICや英検のスコアは一つの指標に過ぎません。本当に優秀な翻訳チェッカーになるためには、スコアだけでは測れない、より実践的な能力を磨く必要があります。ここでは、現場で本当に役立つ能力と、その具体的な身につけ方について解説します。
▶実際の翻訳チェッカー募集要項

「日本語力」と「表現力」
翻訳チェッカーにとって、英語力と同じくらい、いえ、それ以上に重要なのが日本語力です。どれだけ原文を正確に理解しても、それを自然で読みやすい日本語に修正できなければ、良いチェッカーとは言えません。文法的に正しいだけでなく、文章のリズムや語彙の選び方、読者に与える印象まで考え抜く必要があります。
自然な日本語に修正する力: 直訳調のぎこちない文章を、元の意味を損なうことなく、日本人が読んで違和感のない文章に修正する。
文体とトーンを統一する力: 報告書なら「である調」、ブログ記事なら「ですます調」といったように、文書の目的に応じて文体やトーンを使い分ける。
専門知識とリサーチ能力
翻訳チェッカーは、多岐にわたる分野の文書を扱います。IT、医療、金融、法律など、それぞれの分野には独自の専門用語や概念が存在します。
専門知識がなければ、正確な翻訳チェックは不可能です。すべての分野の専門家になる必要はありませんが、新しい分野の文書を扱う際に、素早く専門知識をキャッチアップし、正確な情報をリサーチする能力が不可欠です。
リサーチ能力: 専門用語の意味や使い方を、信頼性の高い情報源(公式サイト、専門用語集、関連論文など)から迅速に探し出す。
分野の知識: 自分が得意な分野を持つことで、その分野の案件ではより効率的かつ質の高い仕事ができるようになります。

知らない専門用語に出くわすことは日常茶飯事です。その都度辞書を引いて、文脈から意味を推測する訓練が大事!
まとめ
翻訳チェッカーに必要な英語力は、TOEICや英検のスコアだけでは測りきれません。もちろん、これらの試験で高得点を取ることは、基本的な英語力の証明となり、仕事を得る上での大きな武器になります。
しかし、本当に優秀な翻訳チェッカーになるためには、それに加えて、原文の意図を深く読み解く論理的思考力、そして何よりも高い日本語力と表現力が求められます。
これから翻訳チェッカーを目指すのであれば、まずはTOEICや英検で目標スコアを設定し、英語の基礎力を固めるのが良いですね。そして、それと並行して、日本語の文章読解力を高めたり、興味のある分野の専門知識を深めましょう。
資格試験のスコアはあくまでスタートラインです。その先の「実践で使える英語力」を身につけることが、翻訳チェッカーとして成功する鍵となります。