翻訳チェッカーあるある!仕事にありがちなミスと対策

英語で副業英語翻訳

▼この記事で解決できる悩み
 ・チェッカーとしてのスキルはこれでいいの?
 ・質の高い翻訳チェックをするには?
 ・クライアントから継続的な仕事に繋げるには?

翻訳の最終的な品質を決定してしまう、翻訳チェッカーの役割は重大です。翻訳チェッカーは「原文と訳文を照らし合わせるだけの簡単な仕事でしょ?」そんな風に思われがちですが、実際には、原文の意図を正確に読み解く力、訳文を自然な日本語で表現するセンス、そして細かなミスも見逃さない集中力と注意力が必要とされる、非常に奥深い仕事です。

どれほど経験豊富なチェッカーでも、見落としやミスは起こり得ます。特にフリーランスとして働く場合は、自分のミスが直接クライアントの信頼を損なうことになりかねないので要注意です

本記事では、翻訳チェッカーが「ついうっかり」やってしまいがちな「あるあるミス」を3つのカテゴリーに分けて深掘りし、その具体的な対策について徹底解説します。単なる誤字脱字の指摘に留まらず、訳文の品質そのものを引き上げるためのヒントもありますので、ぜひ参考にしてみてください!

これから翻訳チェッカーを目指す方はもちろん、すでに活躍されている方も、自身のチェックフローを見直す良い機会です。この記事を読み終える頃には、あなたのチェッカーとしてのスキルが一段とレベルアップし、より質の高い仕事を提供できるようになっているでしょう。

Nano
Nano

本業は、米国医療機器メーカーで働く医療翻訳者。英語での副業は19年目になりました。英語で副業したい人にわかりやすく解説します。


原文の読み込み不足が原因の場合

翻訳チェックは、訳文だけを見ていては成り立ちません。原文をどれだけ深く、正確に理解しているかが、ミスの有無を大きく左右します。この段階で発生するミスは、単なる表面的な誤訳に留まらず、文脈のねじれやニュアンスの欠落など、訳文全体の信頼性を揺るがす重大なものになり得ます。翻訳者が意図したことを読み違えたり、原文の背景知識が不足していたりすると、どれだけ訳文を丁寧に校正しても、最終的な品質は高まりません。

文脈の誤解と知識不足

最も多いのが、多義語や専門用語を文脈にそぐわない意味で解釈してしまうミスです。例えば、IT分野の文書で「table」という単語が出てきた場合、それが「テーブル(家具)」を指すことはまずありません。通常は「表」や「データベースのテーブル」といった意味で使われます。しかし、IT分野に詳しくないチェッカーが、辞書に載っている第一義的な意味で捉えてしまうと、文章全体の意味が通らなくなってしまいます。

同様に、固有名詞の誤認も頻繁に起こります。「Apple」が果物のリンゴなのか、テクノロジー企業なのかを文脈から判断する必要があります。また、専門分野の背景知識が不足していると、翻訳者が意図的に省略した表現や、業界内で暗黙の了解となっている用語のニュアンスを汲み取れず、不自然な訳文として修正してしまうことがあります。

このようなミスを防ぐためには、単に原文と訳文を照らし合わせるだけでなく、原文が書かれた背景や分野について、ある程度の知識を持つことが不可欠です。

対策:

原文全体を俯瞰する: チェック作業に入る前に、まず原文全体を一度通読しましょう。どのような内容で、誰に向けて書かれた文書なのかを把握することで、個々の単語や表現の文脈を正確に捉えやすくなります。

不明点は即座に確認する: 少しでも意味が曖昧な専門用語や固有名詞があれば、インターネット検索や専門用語集(グロッサリ)、関連する文書などを参照して、正確な意味を確認する習慣をつけましょう。特に、複数の意味を持つ単語については、文脈の中で最も適切な意味を特定することが重要です。

翻訳者とのコミュニケーション: もし可能であれば、翻訳者に直接確認を取ることも有効です。原文の意図について質問することで、誤解を防ぎ、より質の高いチェックが可能になります。

Nano
Nano

専門用語は、辞書を引くだけでは不十分。関連するウェブサイトや資料も併せて確認するようにしましょう!

ニュアンスの欠落と過剰修正

原文の持つ微妙なニュアンス、文化的背景、ユーモアなどが訳文に反映されていないケースもよく見られます。例えば、日本語の「お疲れ様です」は、英語では単純な “Good job.” ではありません。文脈に応じて “Thank you for your hard work.” や “You’ve been a great help.” など、適切な表現を選ぶ必要があります。チェッカーが原文のニュアンスを理解しきれず、直訳調の無機質な文章に修正してしまうと、原文が持つ本来の魅力が失われてしまいます。

逆に、原文の意図を汲み取った上で、より自然で読みやすい訳文に修正することはチェッカーの重要な仕事ですが、原文にはない情報を付け加えたり、過剰に意訳しすぎたりして、原文から大きく逸脱してしまう「過剰修正」も問題なので気をつけましょう。チェッカーは、原文の忠実さと訳文の自然さのバランスを常に意識する必要があります。

対策:

訳文を声に出して読む: 音読することで、不自然な表現やぎこちないリズム、原文のニュアンスを損なっていないかを確認しやすくなります。耳で聞いて違和感がないかどうかが重要な判断基準になります。

ターゲット読者を意識する: 訳文が誰に、どのような目的で読まれるのかを常に意識することで、より適切な言葉遣いやニュアンスを掴むことができます。専門家向けなのか、一般の消費者向けなのかによって、使うべき言葉は大きく異なります。

修正履歴を明確に残す: 修正箇所とその理由を明確に記録することで、翻訳者やクライアントとの間で認識の齟齬を防ぎ、なぜそのように修正したのかを説明できるようにしておきましょう。

Nano
Nano

原文の良さを最大限に引き出すのが、翻訳チェッカーの仕事です!


訳文の表面的なミスが原因の場合

原文の理解ができていても、訳文そのものの不備を見逃してしまうことがあります。スペルミスや誤字脱字といった初歩的なミスから、より高度な表現の問題まで、さまざまなミスが存在します。

このようなミスは、読者の信頼を大きく損なうだけでなく、翻訳全体の品質を低く見せる原因となります。翻訳チェッカーにとって、これらの表面的なミスを見逃すことは、最も避けたい事態の一つです。

▶校正と校閲の違い

出典:株式会社オフィスバンズ

誤字脱字、スペルミス

翻訳チェッカーにとって最も恥ずべきミスが、単純なタイプミスや変換ミスです。「てにをは」の抜けや、固有名詞のスペルミスは、読者の信頼を大きく損ないます。例えば、会社名や製品名、人名などの固有名詞は、一字一句正確に表記しなければなりません。

また、数字の全角・半角の使い分けや、句読点のルール、括弧の種類なども、ドキュメントの品質を左右する重要な要素です。これらのミスは、熟練したチェッカーでも見落としがちです。特に、疲れが溜まっているときや、急いでいるときに起こりやすくなります。

対策:

最終チェックは必ず複数回行う: 一通りチェックを終えた後、時間を置いてから改めて見直します。可能であれば、プリントアウトして確認することも有効です。画面上では見過ごしてしまうミスも、紙にすることで発見しやすくなります。

チェックリストを作成・活用する: 固有名詞リストや、よくあるミス(「〜である」「〜です」の統一など)をまとめたチェックリストを作成し、機械的に確認するプロセスを導入しましょう。これにより、見落としを防ぎ、チェックの精度を高めることができます。

ツールを有効活用する: Microsoft Wordのスペルチェック機能や、文章校正ツールを積極的に活用しましょう。これらのツールは、単純なミスを効率的に見つけてくれます。ただし、ツールの提案を鵜呑みにせず、最終的な判断は自分で行うことが重要です。

不自然な表現と文体

直訳調のぎこちない文章や、日本語として不自然な語順、不適切な敬語の使用など、訳文の読みやすさに影響するミスも多々あります。原文に忠実であろうとするあまり、硬く、読みにくい文章になってしまうことがあります。

例えば、英語の受動態をそのまま日本語の受動態で訳してしまうと、不自然な響きになることが多いです。日本語では、能動態で表現した方が自然な場合がほとんどです。また、文体が統一されていない(ですます調とである調が混在しているなど)ことも、読者に違和感を与えます。

チェッカーは、単に間違いを修正するだけでなく、訳文をより流暢で自然な日本語に磨き上げる役割も担っています。

対策:

ネイティブスピーカーの視点を持つ: 訳文を客観的に見つめ、「もし自分がこの文章を初めて読んだら、違和感なく理解できるだろうか?」と自問自答する癖をつけましょう。時には、家族や友人に読んでもらい、客観的な意見を求めるのも良い方法です。

文体ガイドラインを遵守する: プロジェクトごとに定められたスタイルガイドや文体ルールを事前に確認し、それに従ってチェックを行います。統一されたスタイルガイドがない場合は、自分自身で簡単なルールを定め、それを徹底するようにしましょう。

類義語辞典などを活用する: 同じ単語が繰り返し使われている場合は、類義語辞典などを活用して、より適切な表現に置き換えることを検討しましょう。これにより、文章にリズムと多様性が生まれ、読みやすさが向上します。

Nano
Nano

日本語として「美しい」かどうか、これが一番の判断基準かもしれません。


統一性の欠如と見落としの罠

翻訳プロジェクト全体で表現や表記が統一されていないと、読者に違和感を与え、本当にプロ?という印象を与えてしまいます。特に、複数の翻訳者が関わる大規模なプロジェクトでは、この問題が顕著となります。

チェッカーは、個々の文章の品質だけでなく、プロジェクト全体の整合性を保つという重要な役割を担っています。この部分の見落としは、翻訳の最終的な品質に大きく影響するので注意が必要です。

企業からスタイルガイドの提示がない場合、プロの翻訳チェッカーは、次のようなスタイルガイドを参考に、用語や表記の統一を図ることが一般的です。

JTF日本語標準スタイルガイド(日本翻訳連盟)

用語の不統一

例えば、「Customer」という単語が、ある箇所では「顧客」、別の箇所では「お客様」と訳されている場合などです。特に、専門用語や略語、固有名詞などは、プロジェクト全体で統一された訳語を使用しなければなりません。プロジェクトの途中で訳語が変更になった場合など、過去の訳文との整合性を取る作業は、非常に手間がかかります。

また、同じような意味を持つ複数の単語を、訳文で使い分けている場合に、その使い分けが適切かどうかを判断するのもチェッカーの重要な仕事です。用語の不統一は、読者を混乱させるだけでなく、ドキュメントの信頼性を損ないます。

対策:

用語集(グロッサリ)を作成・活用する: プロジェクト開始前に、重要なキーワードや専門用語の訳語を統一したリストを作成し、チーム全体で共有しましょう。用語集は、翻訳者とチェッカーが連携して作成することで、より実用的なものになります。

検索機能をフル活用する: 用語の揺れは、Ctrl+Fなどの検索機能を使って機械的にチェックすることができます。例えば、「顧客」と「お客様」の両方が使われていないか、検索機能を使って確認します。これにより、人力では見落としがちなミスを効率的に発見できます。

表記ルールの不統一

数字の表記(例:1,000 vs. 1000)、日付のフォーマット(例:2023/10/26 vs. 26 Oct 2023)、半角と全角の使い分けなど、細かな表記ルールが守られていないケースもよくあります。このようなミスは、文章の意味を大きく変えることはありませんが、ドキュメント全体のプロっぽさを損ないます。

また、記号の全角・半角の混在や、不要なスペースの挿入なども、注意深くチェックしなければなりません。特に、複数のファイルにまたがるプロジェクトでは、この種の統一性を見失いがちです。

対策:

スタイルガイドを参照する: 統一されたスタイルガイドがない場合は、プロジェクトごとに簡単なルールを定めることを提案しましょう。これにより、チーム全体の意識が高まり、統一性が保たれやすくなります。

チェックツールを活用する: ツールの中には、表記の揺れや、記号の全角・半角の混在などを自動的に検出してくれるものもあります。これらのツールを補助的に活用することで、チェックの効率を上げることができます。

最終的な目で見て確認する: ツールだけでは発見できない、微妙な表記の揺れも存在します。最終的には、自分の目で文章を何度も読み返し、違和感がないかを確認することが重要です。

翻訳支援ツール (CATツール)が持つ「用語集機能」や「翻訳メモリ機能」を利用すれば、統一性の確保に役立ちます。今やチェッカーの仕事は、テクノロジーによって効率化されているのです。

CATツール “Trados studio 2024” 無料トライアル


まとめ

翻訳チェッカーの仕事は、単なる間違い探しではありません。原文の意図を深く理解し、訳文をより自然で読みやすいものにする、創造的な側面も持ち合わせています。本記事で挙げた対策は、どれも今日からすぐに実践できるものばかりです。「原文の読み込み」「訳文の客観視」「統一性の確保」という3つの柱を常に意識して、日々の業務に取り組んでみてください。

経験を積めば積むほど、チェッカーとしてのスキルは磨かれていきます。しかし、どんなに熟練しても、人間である以上、ミスを完全にゼロにすることはできません。大切なのは、ミスの原因を特定し、それを二度と繰り返さないための対策を講じることです。

今回ご紹介した「あるあるミス」とその対策を参考に、あなた自身のチェックフローを見直し、さらに質の高い仕事を目指してください。あなたの細やかなチェックが、翻訳プロジェクトの成功と、読者の満足度に大きく貢献することでしょう。

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