医療翻訳に役立つ資格・検定試験 (医薬編)

医療翻訳

医療翻訳に必要なものには、大きく分けて次の3つがあります。

高い語学力
医薬の専門知識
翻訳技能

実は、こうした知識や技能を習得するのに、資格・検定試験の勉強が役立ちます。

この記事では、医療翻訳を始めるために必要な医薬の専門知識を身につけるのに役立つ資格・検定試験をご紹介します。

医薬の専門知識を身につけようと思ったら、何をしたらいいのかちょっと思いつかない!と悩んでいませんか?

製薬会社や医療関連会社で働ければいいですが、そこで働くにもそれまでの経験を問われることになるのは明らかです。そこで、このサイトではそうした知識を得るために役に立つ資格・検定試験をご紹介します。

平行して、医療翻訳スクールの薬学専門クラスで学んだり、薬剤師やMR向けの教材や資料を勉強するのもいいですね。

翻訳者がきちんとした医薬の専門知識があるかないかは、文章を読めば(見れば)すぐにわかります。基礎からしっかり身につけていきましょう。

 翻訳工房ステラ
翻訳工房ステラ

本業は、米国医療機器メーカーで働く医療翻訳者。副業は18年目になりました。英語で副業したい人にわかりやすく解説します。

● 医療翻訳に役立つ資格・検定試験(語学編)はこちら
● 医療翻訳に役立つ資格・検定試験(翻訳編)はこちら

医薬の専門知識を習得するのに役立つ資格・検定試験 3選

医薬の専門知識を習得するのに役立つ資格・検定試験には、次の3つがあります。

では、それぞれどんな試験なのか見てみることにしましょう。

薬学検定

引用:日本セルフケア支援薬剤師センター
試験名薬学検定試験
実施時期随時(受験月の月末までに郵送)
受験言語英語のみ
受験要項【個人での受験】
・インターネットで申し込み
・在宅受験のみ(記述式)
・試験中は辞書や参考書など使用可
・答案と一緒に「誓約書」(自分一人で解答すること)を郵送。
受験料在宅受験は1級と3級のみ
1級:8,200円
3級:6,200円
出題範囲
1級:A~E分野すべて
3級:A~C分野
【A分野】
一般用医薬品(大衆薬,OTC薬、生活改善薬を含む)、医薬部
外品、並びにサプリメントや、保健機能食品(特定保健用食品・
栄養機能食品)の基本問題や、有効とされる成分に関する問題。
【B分野】
薬学を主とした医療用語に関する問題。
【C分野】
疾患,特に生活習慣病の概略・予防・改善のための家庭医学的な
問題など、薬学と関係する周辺分野の問題。
【D分野】
病院・診療所など実際の医療現場で使用される医療用医薬品にお
いて有効とされる成分に関する問題。
【E分野】
食品と薬の飲み合わせや、薬同士の併用(相互作用)の問題、及
び血液・尿検査(臨床検査)値の意味とその異常値に関係の深い
疾患名に関する問題。
問合せ先日本セルフケア支援薬剤師センター

>>試験の申し込みはこちら

薬の知識をイチから学ぶなら、何よりも薬学検定が役に立ちます。

薬剤師になるには、薬学部で6年間勉強し国家資格を取ることが求められますが、薬学検定はそこまで厳しくなく、薬学やさまざまな薬についての基礎知識を身につけるには十分な試験となっています。

出題範囲はA~E分野(上記)ですが、各級の対策&過去問のテキストなどで勉強すればOKです。暗記による記憶力がすべての試験なので、何度も繰り返して読みましょう。

受験資格は特になく(いきなり1級受験も可)、在宅受験の場合はネットや参考書を見ながら解答することができますが、その分問題は難しくなっています。

対策本は、薬学総論から各薬の成分やメカニズムなどがとてもわかりやすくまとまっているので、まずはひと通り目を通すことをおすすめします。

>>対策本&過去問の注文はこちら

登録販売者試験

引用:東京都福祉保健局
試験名登録販売者試験
実施時期年1回(東京は9月)※各都道府県により時期が異なります。
受験方法郵送による申し込み→各都道府県が定める試験会場
例:東京)
芝浦工業大学豊洲キャンパス
昭和女子大学世田谷キャンパス
東京外国語大学府中キャンパス
早稲田大学早稲田キャンパス
受験料13,600円
試験項目・筆記試験

1 医薬品に共通する特性と基本的な知識:20問
2 人体の働きと医薬品:20問
3 薬事に関する法規と制度:20問
4 主な医薬品とその作用:40問
5 医薬品の適正使用と安全対策:20問
出題範囲厚生労働省が定める「試験問題の作成に関する手引き(令和4年3月)」から出題。
試験問題の作成に関する手引き(令和4年3月)
問合せ先東京都福祉保健局

薬剤師は国家試験ですが、この登録販売者試験は国家試験ではなく、民間の資格試験になります。登録販売者の資格があると、ドラッグストアなどで第二類・第三類の医薬品(処方薬以外)を販売することができます。

薬学検定より専門的で、医薬品や人体、副作用などについて学ぶので、より実務に近い内容となります。

医療翻訳をするのに、どこまでの知識が必要かというのも難しいですが(製薬会社にいる薬剤師でも日々勉強している為)、基本的な薬学や製薬の知識を得られる良い試験だと思います。

医療翻訳をやりたい人は、出題範囲である「試験問題の作成に関する手引き(令和4年3月)」には目を通しましょう。いい勉強になります。

治験実務英語検定

引用:一般社団法人 日本CRO協会
試験名治験実務英語検定
実施時期Basicコース、Advanceコース それぞれ年1回
受験言語英語のみ
受験資格国籍、性別、年齢を問わず
受験方法試験問題:オンライン上
回答方法:試験サイトからダウンロードしたWordファイルに入力し、回答終了後に試験サイトにアップロードする
受験料日本CRO協会会員以外:13,200円(税込)
出題内容リスニング(選択):15題
英文読解(選択&記述):2題
短文英訳(記述):15題
長文英訳(記述):3題
レベルの目安TOEIC 600点以上
CRA実務経験1年以上が望ましい
問合せ先一般社団法人 日本CRO協会

>>試験の申し込みはこちら

こちらは日本CRO協会が行っている、治験実務に携わる人の英語力を判定するための検定試験です。

問題作成と採点は翻訳会社「サンフレア」が行っており、オンライン形式で出題され、ダウンロードした解答用紙に記入し、指定通りにアップロードします。

近年は国際共同治験(世界中で治験をしてデータを集める)が増えており、それに対応できる人材を教育し、モニタリング業務のグローバル化に対応するための英語力を身につけます。

実務経験は受験条件になっていませんが、試験内容を勉強することは治験翻訳をする上で役に立ちます。実際に治験翻訳で経験を積んでから受験するのもいいですね。

対策本や過去問は用意されていませんが、サンプル問題はあるのでどんな感じなのか興味がある人はぜひ見てみてください。
>>サンプル問題(Basicコース)はこちら
>>サンプル問題(Advanceコース)はこちら

豆知識

CRO (Contract Research Organization: 医薬品開発業務委託機関)
“企業が新薬を認可申請する際に必要な第三者機関であり、販売促進用の論文やデータの作成、臨床試験(ヒト試験)を行う際の被験者募集機関や被験者とのクッションの役割、企業が委託する医療機関等の監視(モニタリング)等を行う” (引用:Wikipedia)

CRA (Clinical Research Associate: 臨床開発モニター)
“治験が適切に行われているかモニタリングする仕事で、CRAは治験中の症例データの収集や進捗状況の管理を担う” (引用:Answers)

CRC (Clinical Research Coordinator: 治験コーディネーター)
“医療機関において、治験責任医師・分担医師の指示のもとに、医学的判断を伴わない業務や、治験に係わる事務的業務、業務を行うチーム内の調整等、治験業務全般をサポートする” (引用:日本SMO協会)

受験者数と合格率

引用:一般社団法人 日本CRO協会

治験英語の学習方法

治験実務英語検定の受験者に行なったアンケートによると、BasicもAdvanceも自己学習が多いことがわかります。

実務でしか得られない情報もあるかと思いますが、翻訳学校の講座も考えてみるといいですね。

引用:一般社団法人 日本CRO協会

引用:一般社団法人 日本CRO協会

現場で働いてみるのもアリ!

医療翻訳に役立つ資格・検定試験(医薬編)を解説してきましたが、いかがでしたか?

医薬の専門知識を習得するためにおすすめな資格・検定試験は、次の3つです。

ある程度の知識は自己学習や翻訳スクールで学ぶことができますが、派遣などで、製薬企業やCROの現場で働いてみるのもいいかもしれません。

理系や医療分野でのバックグラウンドがない場合は、こうした検定試験で最高位の級を取得することで、アピール材料の一つにしましょう。無駄になる知識ではないので、積極的に受けたいですね。